看板撤去・原状回復会社のM&Aは、単に車両や工具を譲り渡す取引ではありません。閉店日から明渡日までの短い工程を組み、既存看板を安全に撤去し、外壁や電気配線を建物側の条件に合わせて戻す段取りそのものが事業価値です。元請との信用、施工班と協力会社の配置、高所作業車、道路占用・道路使用の確認、廃材の分別、写真付き完了報告、緊急時の連絡網までが一体となって初めて、店舗チェーンの一斉閉店や改装案件を任せてもらえます。本稿では「看板撤去・原状回復会社 M&A」を検討する経営者に向け、買い手が確認するポイント、企業価値を伝える資料、秘密保持、契約から引継ぎまでを実務目線で整理します。
看板撤去・原状回復会社のM&Aで検索する方の疑問
売り手の主な疑問は、職人不足でも会社を引き継げるのか、社長個人の現場判断を評価してもらえるのか、取引先や従業員に知られず相談できるのか、赤字や借入があっても検討余地があるのかという点です。買い手は、撤去売上が一過性ではないか、事故・再施工・未払残業などの潜在リスクはないか、元請との口約束を承継できるか、車両と協力会社を含めて再現性のある施工体制かを知りたいと考えます。
M&Aには株式譲渡、事業譲渡など複数の方法があり、資産、契約、許認可、債務、従業員の扱いが異なります。どの方法が適切かは会社ごとの事情によるため、一般論だけで決めず、弁護士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士など必要な専門家に確認してください。本稿は検討の観点を示すもので、個別案件への法務・税務・会計・労務・許認可上の助言ではありません。
撤去・原状回復事業が持つ独自の承継価値
閉店日から逆算する工程管理
店舗の閉店では、最終営業、商品搬出、内装解体、看板撤去、電気・外壁補修、管理会社検査、鍵返却が連続します。看板会社が一日遅れるだけで足場、警備、内装班の再手配が生じることもあります。価値になるのは売上高だけでなく、現地調査から見積、許可確認、施工指示、完了報告までの標準工程です。案件台帳に現調日、管理会社の指定、停電可能時間、搬入口、高所作業車の設置位置、廃材処分先、写真提出期限が残っていれば、買い手は担当者交代後も品質を再現しやすくなります。
特に店舗チェーン案件では、複数地域で同時に撤去が発生します。本社窓口と各店舗、施設管理者、オーナー、施工班の連絡順序が曖昧だと、現場で追加工事の承認が取れません。連絡先一覧、承認権限、見積変更ルール、緊急連絡の基準を整備することが、受注残の承継可能性を説明する土台になります。
見えない下地を読む現場判断
看板を外すまで、アンカー位置、下地腐食、漏水、隠蔽配線、既存補修跡が分からない案件は少なくありません。現調写真だけで断定せず、想定範囲、除外事項、追加見積の条件を示す見積力が粗利を守ります。壁面材がALC、タイル、金属パネル、塗装面のどれかによって、穴埋めや色合わせの方法も変わります。この判断基準をベテランの頭の中だけに置かず、写真例、補修仕様、材料表、承認記録として残すことで、属人性を承継資産へ変えられます。
短納期を支える施工班と協力会社網
自社職人の人数だけでは能力を測れません。電気工事、足場、クレーン、警備、塗装、防水、産業廃棄物処理など、案件別に適切な協力会社を組めるかが重要です。協力会社台帳には対応地域、保有資格、得意工事、夜間対応、過去単価、保険加入、担当者、支払条件を記載します。社長の携帯電話にしか連絡先がない状態では、譲渡後に発注力が落ちるおそれがあります。
買い手が確認する10のデューデリジェンス項目
1.顧客台帳と継続受注の構造
顧客名の一覧に加え、元請・一次請・施設管理会社・店舗本部など発注経路を分け、直近三年程度の売上、粗利、件数、失注理由、回収条件を整理します。閉店需要は予測しにくく見えても、改装、移転、ブランド統合、定期点検から派生する撤去が継続する場合があります。担当者との個人的関係だけでなく、指定業者登録、購買システム、基本契約、見積ルール、点検履歴に結び付いていれば再現性を説明できます。
2.見積原価と追加工事の管理
車両費、人工、夜間割増、交通誘導、道路使用、廃材処分、補修材、宿泊、現場管理を原価区分し、見積と実績を比較します。追加工事を口頭で進め、請求時に争う慣行はリスクになります。現場写真、変更理由、承認者、金額、日時を残す仕組みが必要です。買い手は平均粗利だけでなく、赤字案件の原因と再発防止が説明できるかを確認します。
3.屋外広告物と道路関係の確認
撤去対象が屋外広告物に該当する場合、自治体の条例、許可、除却届などの確認が必要になることがあります。高所作業車やクレーンを道路上に置く場合は、道路占用や道路使用、交通規制、誘導員配置の検討が必要になる場合があります。名称が似ていても手続の目的と所管は異なり、自治体や現場条件で取扱いも変わります。許可番号、申請者、期限、提出先、完了時の届出を台帳化し、具体的な要否は所管窓口や行政書士等に確認してください。
4.電気工事とLED電源の処理
チャンネル文字や内照式看板では、看板を外しても電源線、タイマー、分電盤表示、壁内配線が残ります。通電確認、ブレーカー特定、端末処理、絶縁、不要回路の表示まで誰が責任を持つかを施工指示書に記載します。LED電源や変圧器の故障履歴、漏電、焼損跡があれば写真と対応を残します。電気工事に必要な資格・登録の扱いは工事内容等で異なるため、専門家と所管へ個別確認が必要です。
5.高所作業車・車両・工具
車検、法定点検、特定自主検査、修理履歴、リース契約、任意保険、運転資格、鍵管理を一覧化します。帳簿価額が低い車両でも、現場で安定稼働し、適切に整備されていれば事業継続に重要です。一方、更新時期が集中していれば将来投資を織り込む必要があります。最大作業床高だけでなく、設置幅、アウトリガー、積載、現場進入路の制約を担当者が理解しているかも確認対象です。
6.安全衛生と事故・ヒヤリハット
作業計画、KY活動、新規入場者教育、フルハーネス、墜落制止用器具、誘導、立入区画、風速基準、夜間照明などの運用を確認します。「事故ゼロ」という言葉だけでなく、ヒヤリハットを記録し、原因と対策を次の現場へ反映する文化が評価につながります。労災、物損、第三者事故、再施工、保険請求があれば、隠さず経緯と改善策を整理します。労働安全衛生関係の具体的義務は作業内容に応じ、社会保険労務士や労働安全の専門家等へ確認してください。
7.廃材分別と処理委託
撤去物には鉄、アルミ、アクリル、塩ビシート、蛍光灯、LEDモジュール、電源、木材、ガラスなどが混在します。誰が排出事業者となるか、収集運搬・処分を誰へ委託するか、契約書やマニフェストをどう管理するかは案件ごとに確認が必要です。有価物と廃棄物の扱いを安易に自己判断せず、廃棄物処理法その他の関係法令について行政窓口や専門家に確認します。保管場所の表示、飛散防止、数量照合、処分証憑が整っていると買い手の不安を減らせます。
8.原状回復の完成基準
「看板を外す」だけでは完成とは限りません。アンカー穴、シーリング、塗装色、タイル欠損、配線、防水、外壁洗浄、貸主指定材など、引渡基準を見積と施工指示に落とします。施工前、撤去途中、下地、補修後、遠景の写真を同じ角度で撮るルールが有効です。完了報告書に店舗名、施工日、作業者、使用材料、追加事項、残置物、承認者を記載すれば、後日の問い合わせにも対応しやすくなります。
9.設計データ・写真・顧客情報
既存看板のIllustratorデータ、寸法図、写真、ロゴデータ、店舗住所、担当者情報には営業秘密や個人情報が含まれ得ます。保存場所、アクセス権、退職者アカウント、持出し、バックアップ、保存期間、廃棄方法を確認します。顧客から預かったデータをM&Aの検討段階で無制限に開示せず、匿名化、集計、閲覧制限を使って段階的に確認します。譲渡後の利用可否は契約や法令に照らし、必要に応じて弁護士等へ確認してください。
10.未成工事・保証・クレーム
基準日時点の受注残について、見積総額、入金、進捗、発注済原価、残工事、追加見積、完成予定を案件別に整理します。過去の原状回復工事で漏水、色違い、残置配線などの問い合わせが続いていないか、保証条件と担当者を確認します。株式譲渡と事業譲渡では責任関係の整理が異なるため、契約書で対象と負担を明確にし、法務・会計・税務の専門家による確認を受けます。
企業価値を伝えるために準備したい資料
| 資料 | 確認できること | 整備のポイント |
|---|---|---|
| 顧客・案件台帳 | 受注頻度、地域、粗利、担当関係 | 顧客名は初期段階で匿名化し、集中度を集計 |
| 施工・協力会社台帳 | 対応地域、資格、夜間・高所対応 | 基本契約、保険、単価、連絡先を更新 |
| 車両設備一覧 | 稼働能力と将来更新負担 | 点検・修理・リース・写真をひも付け |
| 許認可・届出台帳 | 事業継続に必要な手続 | 名義、期限、対象業務、承継可否を専門家確認 |
| 点検・完了報告書 | 施工品質と説明力 | 施工前後、下地、配線、廃材の写真を標準化 |
| 事故・クレーム一覧 | 潜在債務と改善文化 | 事実、費用、保険、再発防止を分けて記載 |
資料は量よりも整合性が重要です。会計上の売上と案件台帳の完成日、請求書、入金がつながるようにします。社長が説明しなければ分からない略称や例外処理には注記を付けます。買い手に良く見せようとして不都合な案件を除くと、後の調査で信頼を損ねます。弱点も改善計画と併せて開示する方が、条件調整を現実的に進めやすくなります。
譲渡価格を考えるときの実務的な視点
中小企業の評価では、純資産、将来収益、類似取引など複数の考え方が用いられますが、特定の計算式だけで価格が自動決定するわけではありません。看板撤去会社では、顧客継続性、社長依存度、施工班の定着、協力会社網、見積精度、車両更新、許認可、未成工事、事故・保証、借入や個人保証などが条件に影響します。最終的な価格と条件は、買い手の戦略、調査結果、交渉、契約条件を踏まえて決まります。
正常収益力を見えるようにする
一時的な大型閉店案件だけで利益が増えている場合と、毎月の小口撤去・保守から安定して案件が流入する場合では見え方が異なります。役員報酬、家族給与、遊休資産、保険、臨時修繕などを整理し、事業を通常運営した場合の収益を説明します。ただし調整の妥当性は会計・税務判断を伴うため、公認会計士や税理士に確認してください。
社長依存を分解する
社長依存があるから売却できないとは限りません。受注、現調、見積、施工班編成、追加承認、請求、クレーム対応のどこに依存があるかを分解します。見積テンプレート、顧客別ルール、日次会議、権限表を導入し、番頭や現場責任者へ段階的に移します。譲渡後に社長が残る期間と役割、報酬、競業避止、意思決定権は曖昧にせず契約で調整します。
設備更新と運転資金を先に示す
高所作業車の更新、大型工具の修理、賞与、税金、外注費先払いなど、譲渡後に必要な資金を月次で見える化します。売掛金の回収が長く、協力会社への支払いが先行する場合、黒字でも運転資金が必要です。買い手が資金需要を読み違えないよう、月次残高、回収サイト、支払サイト、繁忙期を資料化します。
秘密を守りながらM&Aを進める手順
匿名相談とノンネーム資料
初期相談では社名や顧客名を出さず、地域、売上規模、従業員数、得意工事、譲渡理由、希望時期を抽象化できます。ノンネーム資料も、珍しい大型案件、店舗数、地名の組合せから会社が推測されないよう注意します。相談先の情報管理、担当者の範囲、連絡方法、資料保存方法を確認し、自宅住所や共有メールへの送信を避けるなど運用も決めます。
NDAと情報の段階開示
具体的な買い手候補へ進む前に秘密保持契約(NDA)を締結し、利用目的、開示先、複製、返却・廃棄、存続期間などを確認します。NDAがあっても最初から顧客名、従業員名、設計データをすべて渡す必要はありません。第一段階は集計値、第二段階は顧客属性や案件別匿名データ、基本合意後の調査で限定開示、最終局面で原本確認というように、必要性に応じて範囲を広げます。
従業員・取引先への説明
早すぎる説明は不安や情報漏えいを招き、遅すぎる説明は信頼を損ねます。雇用条件、勤務地、指揮命令、退職金、資格手当、車両、取引契約の扱いを確認し、誰が、いつ、何を説明するか計画します。譲渡方式により同意や手続が異なり得るため、労務・法務専門家の確認が必要です。説明では「何も変わらない」と保証せず、確定事項、検討中事項、相談窓口を分けて伝えます。
成約前に設計する引継ぎ計画
最初の30日:止めてはいけない業務
受注窓口、緊急撤去、施工予定、車両予約、協力会社支払い、許可申請、完了報告、請求を優先します。進行中案件ごとに責任者と次の期限を一枚にまとめ、毎日更新します。顧客への挨拶は重要度と情報感度で順番を決め、旧社長と新責任者が同行します。事故時の連絡、現場中止判断、保険会社、管理会社への連絡も確認します。
31日から100日:標準化と関係承継
見積、写真、施工指示、追加承認、完了報告、請求の様式を統一します。旧会社の良い運用を一律に買い手方式へ変えず、顧客が評価していた速度や柔軟性を残します。主要協力会社とは面談し、支払条件、発注方法、安全基準を再確認します。職人から改善案を集め、車載工具、材料置場、廃材分別の小さな不便を解消すると、統合への納得感を得やすくなります。
100日以降:相乗効果を慎重に実装
買い手が看板製作、保守点検、大型出力、LEDサイン、内装工事を持つ場合、撤去から新設までの一括提案が可能です。しかし、営業目標だけを先行させると現場能力を超える受注につながります。地域別の施工能力、協力会社余力、粗利、事故リスクを見ながら試行します。顧客の同意なく設計データや連絡先を別用途に使わないことも重要です。
売却準備で起こりやすい失敗
口約束を契約と同じように扱う
「次の閉店も任せる」「協力会社は必ず残る」という言葉は、将来受注の保証ではありません。基本契約、発注実績、指定業者制度、担当者関係、競合状況を分けて説明します。買い手に過度な期待を持たせないことが、成約後の関係維持につながります。
許認可の承継可否を後回しにする
屋外広告業登録、建設業許可、電気工事に関する登録、産業廃棄物関係などは、業務内容、地域、譲渡方式によって扱いが異なります。名称だけで必要・不要や自動承継を断定せず、早期に一覧を作り、行政窓口や行政書士・弁護士等へ確認します。更新期限や変更届もスケジュールに入れます。
社内資料を急に大量作成する
普段存在しない資料を一度に求めると従業員が異変を感じます。通常の経営改善として、案件台帳、車両台帳、資格一覧、写真ルールを少しずつ整えます。M&A専用ファイルはアクセス権を限定し、印刷物の置忘れ、共有複合機、クラウド通知にも注意します。
価格だけで買い手を決める
提示価格のほか、支払時期、前提条件、表明保証、補償、役員借入、個人保証、従業員処遇、社名、拠点、譲渡後の役割を比較します。条件の意味を理解せずに基本合意や最終契約へ進まないことが大切です。契約文言は弁護士、税務処理は税理士など、領域に応じた専門家の確認を受けます。
買い手にとっての成長機会
撤去・原状回復会社を取得する買い手は、撤去単体の売上だけでなく、店舗ライフサイクル全体への接点を得られます。看板メーカーなら新設から保守、撤去までを一貫化でき、内装会社なら閉店工程の窓口をまとめられます。広域施工会社なら地域協力会社網を補完できます。ただし相乗効果は自動的には生まれません。顧客契約、許認可、施工能力、情報利用、独占条件を確認し、小規模な共同案件から検証することが現実的です。
また、保守点検時に腐食やLED電源不良を把握し、修理・更新・撤去の選択肢を顧客へ提示できれば、安全管理と営業がつながります。点検報告書を単なる写真集にせず、設置場所、部材、劣化、緊急度、推奨対応、次回確認時期を共通化します。法令上の点検義務や資格要件は自治体等で異なるため、対象ごとに確認してください。
地域をまたぐ撤去案件で確認する実務
自治体ごとの差を案件台帳へ落とす
店舗チェーンの撤去では、同じ仕様の看板でも設置自治体、道路条件、商業施設の管理規則によって準備が変わります。本部から届いた一枚の指示書を全店へそのまま適用せず、店舗別シートに屋外広告物の許可状況、除却時の届出確認、道路上作業の有無、施設入館申請、作業可能時間、騒音制限、搬出経路、廃材仮置場を記載します。条例や所管の最新情報を確認する担当者と期限を決め、過去案件の記憶だけで判断しない仕組みが重要です。
買い手候補に地域対応力を説明するときは、「全国対応可能」といった抽象表現ではなく、直近の対応都道府県、月間施工可能件数、自社班と協力会社の比率、夜間対応地域、遠方出張の原価、現地管理者の配置方法を示します。協力会社任せの地域では、元請として誰が品質確認と完了報告を担うかを明確にします。広域対応力を誇張せず、現在の能力と増員時の条件を分けることが信頼につながります。
商業施設と路面店の工程差
商業施設では、入館者登録、搬入車両申請、養生、火気・停電申請、警備立会い、廃材搬出時間など施設独自のルールがあります。路面店では歩行者動線、道路使用、近隣店舗、騒音、高所作業車の設置が中心論点になります。ロードサイド店では大型ポール看板、基礎、地中配線、駐車場規制が加わります。案件種別ごとのチェックリストを持つ会社は、担当者が変わっても見落としを減らせます。
ポール看板を地際で切断するのか、基礎まで撤去するのか、埋戻しと舗装復旧をどこまで行うのかは、見積前に貸主や管理会社と合意します。基礎撤去では地中埋設物、重機、残土、交通動線が関係し、想定外の追加費用が生じやすいためです。工事方法の適否、必要な届出、廃棄物の取扱いは現場条件に応じて専門家や所管へ確認します。
月次管理でM&Aの説明力を高める
売上より先に施工能力を見る
撤去案件は月ごとの件数が振れやすいため、売上だけを追うと将来の能力を見誤ります。月間の現調件数、見積提出件数、受注率、施工件数、人工、協力会社人工、高所作業車稼働日、夜間工事件数、再施工件数、完了報告の提出日数を記録します。問い合わせから現調、見積、受注、施工までの転換率を見れば、営業力と現場余力を切り分けられます。
案件別粗利は、請求額から材料と外注費を引くだけでは不十分です。自社人工、車両、交通、宿泊、警備、許可申請、廃材、現場管理、再訪問を可能な範囲で配賦します。完璧な原価計算を目指して現場入力が続かなくなるより、少数の区分を毎月継続し、例外理由を残す方が有用です。会計処理や原価配賦の妥当性は会計専門家に確認します。
受注残の確度を分ける
顧客から相談があっただけの案件、見積提出済み、口頭内示、注文書受領、施工日確定を同じ「受注予定」に入れないようにします。確度、予定月、見込売上、見込粗利、必要人工、車両、主要外注を分けます。M&Aの調査では、基準日後に売上になる案件と、その売上を完成させるための原価・前受金・発注義務を対応させることが重要です。
キャンセルや延期が起きた場合も履歴を消さず、理由を記録します。閉店延期、貸主承認待ち、他工事との調整、予算未確定など理由別に集計すれば、見込みの精度を改善できます。買い手へは受注残を保証のように示さず、確定度と前提条件を明記します。
人材の技能を見える化する
従業員一覧には年齢と勤続年数だけでなく、現調、見積、顧客折衝、施工管理、電気、溶接、高所作業、車両運転、写真報告、協力会社手配などの技能を記載します。資格証の有効期限と講習履歴も確認します。特定の一人しかできない業務には副担当を置き、同行回数や単独実施の基準を決めます。
職人の評価は速さだけでなく、安全、仕上げ、報告、顧客対応を含めます。撤去後の壁面を傷めず、想定外を早く報告し、勝手に追加工事を進めない人材は重要です。技能表を処遇の一方的な見直しに使うのではなく、教育計画と手当の検討に結び付けます。雇用条件の変更や労務管理は社会保険労務士・弁護士等へ確認してください。
譲渡前後の実務チェックリスト
基本合意前に確認すること
譲渡目的、希望時期、譲渡方式の候補、株主、役員、金融機関、個人保証、主要契約、従業員、許認可、訴訟・クレーム、設備投資予定を整理します。候補先の資金力だけでなく、看板業界への理解、現場安全の考え方、従業員処遇、拠点方針を確認します。基本合意に独占交渉や費用負担が含まれる場合は、その期間と解除条件を理解し、弁護士等の助言を受けます。
最終契約前に確認すること
譲渡対象、除外資産、現預金、借入、役員借入、未成工事、売掛金、買掛金、リース、賃貸借、保険、許認可、従業員、退職金、個人保証、表明保証、補償、競業避止、クロージング条件を確認します。契約書の用語を営業上の理解だけで解釈せず、具体例を挙げて専門家へ質問します。売り手が把握している問題は、開示資料へ正確に記載します。
クロージング当日に確認すること
代金、株式・資産の移転書類、印鑑、通帳、電子証明、契約原本、車両鍵、クラウド管理者、電話、ドメイン、保険、許認可書類の授受を一覧で照合します。パスワードを平文メールで一斉送信せず、安全な方法で移管し、旧管理者の不要権限を停止します。現場が動いている日に権限を切り替える場合は、受注・施工・請求が止まらない順番を事前に試します。
クロージング後に確認すること
主要顧客と協力会社への挨拶、金融機関・保険・リース・賃貸借の手続、従業員説明、給与・勤怠、請求口座、事故連絡網を確認します。前後どちらの会社が対応するか曖昧な問い合わせを共有台帳に入れ、回答期限と責任者を決めます。旧社長への質問を無制限に個人連絡するのではなく、定例会でまとめ、引継ぎ記録として残します。
相談先を選ぶときの確認ポイント
M&A支援者を選ぶ際は、料金だけでなく、業務範囲、担当者、秘密保持、買い手探索、企業評価の説明、専門家連携、利益相反への対応、契約期間、解約、資料管理を確認します。看板業界の用語を知っているだけでなく、施工班、屋外広告業登録、道路占用、LED電源、完了報告、廃材処理、店舗チェーンの発注構造を質問できるかも重要です。
中小M&Aガイドラインの趣旨を踏まえ、支援内容と手数料、契約上の重要事項について説明を受け、分からない点を残さないようにします。買い手候補の数だけを成果と考えず、譲渡目的に合う候補へ必要な情報を安全に届けられるかを見ます。相談したから必ず売却しなければならないわけではありません。親族・役員承継、採用、提携、廃業を含む選択肢と比較し、経営者が納得できる方針を選ぶことが大切です。
よくある質問
赤字年度があっても相談できますか
相談は可能です。大型車両更新、一時的な外注費、取引先の閉店集中、役員報酬など、赤字の理由を分解します。ただし買い手が必ず見つかる、希望価格で売れるという保証はできません。資金繰りに余裕がある段階ほど、改善と複数選択肢の検討時間を確保できます。
従業員に知られず相談できますか
初期は匿名相談、NDA、ノンネーム資料、情報の段階開示により範囲を絞れます。ただし成約・引継ぎには適切な時期の説明が必要です。完全な秘密保持を無条件に保証する表現は避け、連絡先、面談場所、ファイル権限など具体策で漏えいリスクを抑えます。
社長が現場を離れられなくても進められますか
繁忙期を避け、資料収集を分担し、面談をまとめることで負担を抑えられます。まず月次試算表、顧客別売上、従業員・協力会社、車両、許認可、受注残から準備します。担当アドバイザーが整理を支援しても、事実確認と意思決定は経営者に必要です。
事業譲渡なら許認可もそのまま移りますか
一律には言えません。許認可・登録ごとに、名義変更、再申請、届出、要件確認が必要になる場合があります。株式譲渡でも役員や所在地等の変更届が必要になることがあります。対象業務と地域を特定し、所管窓口および行政書士・弁護士等へ確認してください。
譲渡後も会社名や拠点を残せますか
買い手との交渉事項です。地域での信用や採用に社名が有効なら、一定期間残す合理性があります。拠点賃貸、保証、商標、ドメイン、電話番号も含め、希望と理由を早めに伝えます。将来変更の可能性がある事項は、従業員や顧客へ断定的に説明しないようにします。
まとめ|撤去技術ではなく「安全に完了させる仕組み」を承継する
看板撤去・原状回復会社のM&Aで承継される価値は、工具や車両だけではありません。閉店工程を守る段取り、下地を読む見積、施工班と協力会社網、道路・屋外広告物・電気・廃材に関する確認、現場写真、完了報告、顧客との信用が結び付いた運営システムです。顧客台帳、許認可台帳、車両点検、事故記録、設計データ、未成工事を整え、社長依存を業務単位で可視化すれば、買い手は譲渡後の運営を具体的に描けます。
関連する内部リンクとして、許認可の全体像を確認する「屋外広告業登録・許認可台帳をM&A前に整理する方法」、資料準備を深掘りする「データルームに入れるべき看板会社の資料一覧」、成約後の運営を考える「譲渡後100日で崩さないPMIの進め方」もあわせてご覧ください。
秘密を守った匿名相談から始められます
看板業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の相談料・着手金・中間金・月額報酬・成功報酬をすべて0円としています。匿名相談から始め、NDAを締結し、ノンネーム資料と情報の段階開示を用いて秘密保持に配慮します。中小M&Aガイドラインの趣旨を踏まえ、支援内容、手続、想定リスクを分かりやすく説明します。法務・税務・会計・労務・許認可の個別論点は、必要に応じて適切な専門家の確認を受けてください。
